床曇る夜。月明かりのない夜は、なぜだか少し寒い気がする。いつものように二人、広くはないこの部屋に座り、ただ、その夜が過ぎるのを感じていた。「…寝る前に、軽く体をあたためて欲しい?」 「ん…」 あたためたい、そう思ったのか。それとも、自分自身があたためてもらいたいと思ったのか。膝を崩すように座る私は、手招きをして、彼女を自分の膝の上に座らせた。 二人で同じ方向を向くように、彼女の背中が私の胸に寄りかかる。抱き寄せると、椅子にもたれかかるように背中を預けてくれる茉那の、その唇に指で触れた。 「じゃあ…あたためてあげる」 「はぅ…あ…」 もう片方の手で、服越しに胸を包む。弱いけれど、確かに伝わってくる鼓動。それを逃がさないように、丁寧に手のひらで撫でていく。 「…姉さまの…指、舐めても良いですか?」 細い呟き。触れている唇が、ふるふると小さく震えている。 「ええ。…ただし、いやらしい音をたてなくては駄目よ?」 釣り針のように指を曲げて、茉那の唇の隙間にそれを割り入れる。ゆっくりと伸びてくる舌が、私の指、爪の輪郭をなぞるようにちろちろと舐めはじめた。 「あむ、んっ…ん」 ぴちゃぴちゃと、言いつけを守るように懸命に音を鳴らす茉那の舌。その動きは、だんだんと私の指を浸食していく。 けなげ、という言葉が似合いそうなそれは、それでいてどこかいやらしい。 「茉那の感じる場所は、ここだったかしらね…」 褒美と悪戯をかねて、服の上から胸の先をなぞる。わざと問いかけたその言葉は、茉那の耳に届いた瞬間、声から愛撫に変わっていくんだろう。耳が微かにぴくっと動いたかと思えば、その動きは全身に伝わっていく。 「ほら…。茉那の体は、こんなに素直…」 「ひゃ、ひゃうっ! や、抓らな…んっ…」 服の上から、親指と人差し指でそれを絞るようになぞる。 抱きしめる腕に、びくっという感触が走る。茉那の跳ねる動きが、腕を通じて私の胸までを震わせた。 「ほら…。昨日、あなたの中でどんな風に動いていたか、口の中でしてあげる…」 「…んぷっ…んっ、んっ…や、やあ…」 その言葉に昨晩の様子を思い出したのか、一瞬で茉那の様子が変わる。恥ずかしさに彩られた頬が上気して、うっすらと染まっていく様子がたまらなく愛しい。 茉那の口の中を秘部に見立て、昨日の動きを再現するように指を動かす。 「んむっ、んっん…ぷ…指、こんな…に…んっ 」 茉那の舌が、指の動きを懸命に追いかける。唾液で一杯の口の中で、私の指は彼女の舌にくるまれて、何度もなぞられていた。 「じゃあ…今度はこっちね」 胸に爪を立てる用意をしながら、囁きを落とす。 「…ほら、指だってこうすれば…舌に変わって…胸を舐めることが出来るのよ…?」 耳元に近づけた唇。それで、彼女の耳をそっとくわえた。舌を徐々に動かしながら、耳たぶを胸にあるつぼみに見立てて舌を動かす。 「…っ…ゅ…んっ…ぁむ……」 耳そのものを舐められる音と空気の震えを、彼女の中に流し込むように、耳へ舌を這わせる。小さな吐息も混ぜながら、茉那の内側へと届くように繰り返す愛撫。 「…ん、ぷ……くち…ゅ…ぁ…」 休まずに胸を愛撫されながら、その動きに合わせて耳にくちゅくちゅという音が鳴り響く。彼女の中でそれが混ざり始めたのが、言葉の火照りでなんとなく分かる。 「じゃあ、こうして…この指の舌をここにあてると…」 言いながら、自分の指を胸から腰まで一気に滑らせる。もじもじと動く足によって既にはだけていたスカートの、その中に指を入れていく。 わずかな熱気と、汗による湿り気。そしてなによりも、すでに濡れた下着が私の指を歓迎するかのように待ちかまえていた。 「ほらこれで…上の口も、下の口も…両方、舐められてる…」 確かめるように、その割れ目にそって指を押し当てる。囁いてからまた、私の舌は茉那の耳元でやらしい音を作り始めた。 こねるように、とろりとした音を作るために茉那の耳元で舌がうねる。 「姉…さま、やらし…ぃ…」 「じゃあ…そのいやらしい姉様の腕の中で、その痴態を披露してるのは誰?」 可愛らしい抗議の声に、いじわるな質問を返す。自分の方がやらしい、という遠回しな答えが、茉那の体から少しずつ力を奪っていく。 「っ! …んんんっ、や、やっ…姉さま…ひ、ひどっ…んくっ」 私の指をくわえたまま、しゃべりずらそうな茉那が声を漏らす。けれどその度、彼女の口に含まれている私の指に熱い息が触れた。 「ほぅら…もう、こんなに……」 追い打ちをかけるように、下着越しに指を何度か押しつける。そのたび、水を含んだスポンジのように、指に蜜が薄くまとわりついてきて私のことを誘う。 「だ、だって…んくぅっ…姉さま…が、いじ…るか…あ、あ…んくっ」 切なそうに、けれど指に絡める舌の動きは休めない茉那。彼女の言葉をあえて無視することにして、私はさらに指を沈める。指を通して、くちっ、という蜜の音が聞こえた。 「ほら、指が沈むたびに、この指をしめらせるのはなに…?」 「んっ…やぁ…姉さまが…いじる…から、で…す…」 言葉と裏腹に、わずかに振り向いた瞳がすがるように私を見つめる。そこに、これからの進展を期待する色があるから、私はさらに意地悪を続けてしまう。 下着を指でつまみ上げて、外気と蜜を混ぜるように指をあてていく。だんだんと大きくなる音は、体の内側からも外側からも、茉那の感覚に届いているに違いない。 「ほら…この音は、茉那がいやらしい子だと教えてくれているわよ…? 姉様が悪いの? それとも、茉那が悪いの…? お答えなさいな…」 「んくっ…うっくっ…んっ…姉さまが……いじ…」 恥ずかしさや理性が、自分の体から溢れる愛液をいじられる音によって崩れていく。その様子は、どこか危うくて、それでいて何よりも可愛らしい。 だから、指の動きは無意識に激しさを増して、指のたてる音も、あわせて大きくなる。 「や、姉さ…ま……もっと…んっ…いれ…て、くださ…んんっ……」 「じゃあ、これから上と下の口を、まったく同じにしてあげる…」 右手と左手。それぞれ人差し指だけだったそこに、中指も加える。合計四本の指が、彼女の熱を受け取るために、その中へとはいっていった。質の違う二種類の粘液が、私の指をそれぞれに出迎える。 「うぷ…ひっ…あ、あ、ああ、あ……んく…ん…は、はい、入って…ゆび…ぃ…」 口の中、戸惑う舌を指で挟むように、その舌先を指で丁寧になでる。舐め返そう、としているのかちろちろと動く舌の動きがたまらなく可愛い。 「あ、あふっ、もっ…と…んっ…もっと…ひ…て…ぇ」 舌の自由が奪われて、言葉にどもりが生じる。たどたどしい言葉と、指を深くくわえる唇が、上気した頬と相まって普段の茉那からは想像できないほどの艶めかしさを醸し出した。汗ばんだ素肌と、どこか頼りない動きのアンバランスさが、それをより強調する。 「んぷっ、う…ん、くっ……やぁ、下も…上も…もっとぅ…」 甘えるように声を出して、茉那の手が私の腕をつかんだ。そのまま頼りない動きで、自分の陰部をまさぐる私の指に対して、さらなる愛撫を要求してくる。 「おねだりが上手ね、茉那…。ほら、素直な子にはご褒美よ…?」 彼女の手の動きに逆らわないように、その動きに同調していく。腰を沈めるように指をより奥の方へと進入させていくと、指に蜜が絡まって熱い。それを絡めるように、二本の指をゆっくりと曲げながら、割り開くようにして広げていく。 「っ! ん…ふ、う…んっ…や…ひ、ひろげ…な…痛っ…んくっ…」 自分の中で、それが大きくなるような錯覚をともないつつ、茉那が体をよじる。倒れてしまわないよう、彼女の体を腕の中にしっかりと包みながら、それでも、手の動きは止めないように、止めないように。 「はっ、はぁっ…やぁ、姉さま痛…い…んんっ…くぅ…」 眉を寄せ、わずかに苦悶の表情を浮かべながら、それでも茉那の腰は指を求めて動く。その声色がだんだんと溶けていくのを聞き逃さないように注意しながら、指を、彼女が求めている場所へと這わせる。 ひときわ熱く、そして柔らかい場所。 「い、いた…痛い…けど…けど……あああっ、くうん…」 吐息と共に、開いていた指を押し戻すような力が加わる。だから、それに逆らうことなく指を小刻みに震わせながら、小さな芽を親指でこすりあげた。 「あっ、あっ、あっ…う、くん、いい……これ…いい…んっ」 きゅぅ、という音がしそうなほどに、茉那の体が萎縮する。 「茉那の中、熱くて…ほら、こんなに溢れてる…」 入り口付近、そこで指をわざとこねるように回すと、指の隙間から溢れた蜜がぴちゃぴちゃという音で茉那を責め立てた。耳を舐める目的で近寄せた唇で、甘く囁く。 「ほら、まだまだこんなに……」 私の小さな声よりも、今はもう、指と絡み合う愛液の音のほうが大きい。私が囁かずとも、茉那の脳裏にはそれがはっきりと映し出されているに違いない。 「ひゃうっ、んっんく…んっん、ん…っ!」 こらえきれないのか、時折、口の中に入っている私の指を歯で噛むように身悶える。むせることすら忘れたように、指に絡められた舌が懸命に動く。 「やぁ…くる、きます、姉さま…ぁ、あっ…き、きちゃい…ますっ…!」 「いいわよ、茉那。存分に弾けなさいな…」 囁いた瞬間、茉那の体躯がびくっと揺れた。囁きのとおり、まるで弾かれたように、その動きがより一層、なにかを求めて大きくなっていく。 「姉さま、姉さまっ、姉さまぁっ…! …んん、んんっ! くうぅうんん…っ!」 磁石が引き寄せられるように、茉那の全身が私にしがみついてくる。早鐘を繰り返す胸の鼓動が、彼女の素肌を伝わって私に流れ込んでくるのが分かる。 それはとても激しくて、熱い。 「ぁっ、あぁぁ…ふぁああんんっ! …ぁ…ぁ…」 茉那の腰が沈むように揺れて、その勢いで私の指が飲み込まれていく。指に伝わるのは、彼女が私の指や声を糧に生み出した甘い蜜の流れ。 「茉那…」 「ん…んん…姉さま…ぁ」 自分の腰をずらして、彼女の負担にならない姿勢を作る。体勢を動かすたび、指はその中から伝わる蜜で音を漏らし、その度、茉那はわずかに吐息をこぼした。 ゆっくりと指を抜き取ると、とろりとした感触が私の指についてくる。思わず指を使ってそれをこすり合わせ、その感触を確かめてしまう。 茉那の中から生まれてきたその温度を舌で味わおうと、指を唇へ近寄せる。けれど茉那の両手が、そっと私の手のひらを握った。 「姉さまの手…よごしちゃい…ました…。…ん…ぁむ…ん」 「……もう、茉那は果てた後も可愛いわね…」 舌をちろりとのばし、自分の愛液を舐め始める。そんな茉那を見ていたら不思議と笑みが零れ、私は空いていた方の手で彼女の髪を撫でた。 「ぁむ…ん、しょっ…ぱい…ん……」 無意識なのか、ぴちゃぴちゃと音を立てながらそれを舐める茉那。私の指はもうほとんど彼女の口唇の中におさまって、されるがまま。 放っておいたらいつまでも終わりそうにないそれに区切りを与えるため、彼女の後頭部を自分の胸に寄せて、そのまま後ろに倒れ込む。 「ふあぁっ?」 昨日と同じように、驚いた声ときょとんとした顔。だた昨日と違うのは、一緒に仰向けになって、体を密着させて天井を見上げているという事。 「今度するときは、姉様も気持ちよくさせて頂戴ね…」 髪をなでる。指を通すと、汗を吸っている髪はそれが当たり前であるように、私の指に絡んでくる。仰向けのまま後ろから抱きしめると、茉那がうつむいた。 「…ごめんなさい。私ばかり…」 しゃぶっていた私の指を見つめ、寂しそうな声で呟く。それは違うと教えるため、私は茉那の舌で綺麗になった手のひらを、彼女の手に重ねた。 「…茉那、気にしないで。私はあなたを導くことで、自分でも感じているんだから…」 自分の下腹部、そしてその下。滑るように手を動かし、下着の上からそこに茉那の指をあてがう。 自分の腕の中で、茉那の感じる様子を見つめる。それだけで呼応し同調してしまう私の体。茉那の指が触れた箇所は、下着の上からでも分かるほどに濡れている。 「ほら……姉様のここは、こうして茉那を感じている…」 茉那の指が遠慮がちに私の秘所をなぞっていく。そっと手を離しても、茉那の指はそこから離れることなく。 「…あったかい…」 「んっ…。もう、悪戯なんだから…茉那は」 彼女の指先が、くっと動く。それはなぞるよりも押し込むに近くて、なんの身構えもしていなかった私は思わず声を漏らした。 その行動をたしなめるように、体を入れ替えて茉那と向き合う。そのまま横になると、私は彼女の唇にキスをした。 「んっ…姉さまほどじゃ…ないです…んっ」 「……んぅ…っ…ぁ」 拗ねるような声と共に、茉那の舌が重なってきた。それをくわえ込むように、そっと舌を重ね、そして吐息を絡めてキスを続ける。 「姉様は茉那にだけ意地悪だし、悪戯なの。分かってちょうだいな」 「…うー、いつか仕返し」 不満そうな声を漏らすことで、私の問いかけに答える茉那。 上目遣いの瞳が、私の顔をじっと映す。 「…そうね、沢山感じさせてちょうだいな。その様子で、茉那を熱くしてあげる…」 「ん…恥かしいよ」 きゅっと私の服をつかんだ茉那が、その言葉を最後に瞼を閉じた。寄り添う体と、安らかな彼女の寝息は、私すらも夢の世界へと誘う。 何もない床に体を預け、寄り添って眠る彼女。その寝顔に手のひらで触れると、ぬくもりが私の手を焦がした。 彼女にしか宿らない熱。私の大好きな、彼女の体温。 姉様がいればなにもいらない。そう見えてしまうのは、きっと世界に私だけ。これはささやかでありながら贅沢な我が侭に違いない。 「…おやすみ、茉那」 もはや夢の世界にいるであろう彼女に声をかけて、私も目を瞑る。その熱を逃がさぬように、繭のように全身を使って彼女を包み込みながら。 |
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